コラム
建築資材をデザインに活用するメリットとチェックポイント
建物やオフィスの内装をデザインするとき、建築資材をあえてむき出しにしたまま、デザインに活用する事例が増えています。その背景には、円安や世界情勢による建築資材の高騰や人件費上昇などの、さまざまな課題があります。建築資材をデザインとして活かすと、建築資材のロスを減らしたり、建築コストをおさえられるといったメリットがあります。この記事では、建築資材をデザインに活用するメリットとチェックすべきポイントをご紹介します。
◎建築に必要な資材が抱えている課題

建築に必要な各資材が抱えている課題には、用意した建築資材を使わない、資材ロスもあげられます。建築現場では、資材に問題が起きても工期を遵守するために、予備の建築資材をあらかじめ準備するケースがあります。しかしトラブルが起きなければ予備は使われず、廃棄されてしまいます。発注者とのトラブル回避や契約履行に重きを置き、建築資材の有効活用よりも工期を優先させざるを得ない状況が、ロスを生み出す理由のひとつとなっています。特定の建築現場の仕様に沿って作られた建築資材をほかの現場で活用するためには、再加工が不可欠です。資材の転用は、容易な作業ではありません。さらに保管する場所の確保や、建築資材として利用できる状態で保管するためのコストも必要です。使われなかった予備の建築資材は、再利用コストより廃棄コストの方が安価なため、結果的に廃棄されて有限の建築資材の無駄使いにつながります。建築資材に問題があった場合を見越して予備を準備しておくことは、トラブルが工期に与える影響を軽減できるものの、建築資材ロスを作る要因になります。
◎建築資材をデザインとして活用するメリット

〇建築資材のロスを削減できるため環境にやさしい
現在と将来の地球環境に配慮できるという点は、内装のデザインとして建築資材を利用するメリットのひとつです。建築資材をデザインに採用すると、建築資材が抱える課題のひとつである、資材ロスの改善を見込めます。建築資材ロスの原因となるのは、資材の不備が判明した際に工期延長を防ぐため、事前に準備された予備の建築資材の不使用と廃棄です。内装を完成させるために必要な各資材とその予備は、建築資材を内装デザインとして利用する場合、不要となります。そもそも、資材ロスが発生する要因を作りません。建築資材の有効活用は、SDGsの目標12「つくる責任、使う責任」に関連する、廃棄物の削減へも貢献できます。建築資材をデザインとして活かすなら、建築資材の無駄を減らし、地球にやさしい環境を目指しつつ、SDGsに取り組む姿勢をアピールすることも可能です。
〇仕上げ材などが不要なためコストをおさえられる
建築資材をデザインとして活用するメリットには、建築費用をおさえられる効果もあげられます。通常は、建築資材の上に下地材や仕上げ材を取り付けて、内装を完成させます。一方、建築資材がむき出しになっているデザインの場合は下地材と仕上げ材が不要になり、そのための資材購入コストがかかりません。建築資材の不使用によってコストカットされた分は、ほかの設備やこだわりたいデザインに活用することが可能です。たとえば、建築資材の素朴さや存在感を建物のコンセプトと融合させて表現する意匠デザインや、従来のイメージを一新させるような内装工事に費やせるでしょう。また、SDGsの観点から見ると、建築資材のデザイン的利用は廃棄物削減と同様に、新しい資源やエネルギーを消費しない、SDGsの目標12にアプローチします。
〇開放感があり広い空間を楽しめる
空間の高さや広がりを目一杯に楽しめるというポイントも、建築資材をデザインに使用すると得られるメリットのひとつです。建築資材を覆うように重ねられる下地材や仕上げ材がないため、空間の広さを視覚的に感じられます。たとえば、建築資材や設備以外がない状態の天井は、仕上げ材が施された天井よりも、より高く広く空間を楽しめます。天井が高く開放感のある大きな空間は、訪れた人に建物やオフィスのイメージをより強く印象づけられ、自社のアピールポイントにもなるでしょう。建築資材を内装のデザインに活かすと、勤務する人や来訪者の両方に、インパクトや居心地のよさの提供が可能です。
〇自由で独創的なデザインを設計できる
自由度が高く、かつ独創的なデザイン設計ができる点も、建築資材のデザイン的活用のメリットです。仕上げ材が施された内装が多いなか、建築資材がむき出しのデザインは、1度目にしただけでもオンリーワンの内装だと感じられます。人の記憶に残りやすい内装ともいえるでしょう。建築資材の質感やカラーに合わせた照明や什器を選定すると、全体の統一感を演出しながら、さらに独創性を高められます。また、天井の建築資材を内装デザインに利用した場合、縦に広がる空間を得られます。背の高いフェイクグリーンや、高さのあるパーテーションなどを室内に複数設置しても、狭さや息苦しさ、圧迫感などを感じにくくなります。建築資材を内装として活用すると、独創性に加えて自由なデザインやアレンジも楽しめます。
◎建築資材をデザインに利用するときのチェックすべきポイント

建築資材の素材やカラーなど、建築資材の特徴をほかの内装デザインと調和させる工夫も、あらかじめ検討が必要です。露出する建築資材と同じ空間にある材料や什器、設備の雰囲気がマッチしない場合、統一感に欠ける印象を与えてしまいます。そのような印象を回避するために、建築資材に塗装をして色合いを変えることもできます。建築資材そのものの素朴さや存在感を活かしたい場合は、資材の特徴を基準に、マッチする什器や照明を選定すると、統一感がない状態を防げます。建築資材の特徴を含めて空間をデザインするからこそ、おしゃれで統一感のある空間演出が可能です。
デザイン性に特化しすぎて、機能性とのバランスが崩れた設計にならないよう、注意することも重要です。建築資材をデザインとして活用させることに注力すると、居心地や作業効率に影響を及ぼす可能性があります。たとえば、天井の建築資材を活かして得られる、縦の空間の広がりは魅力的ですが、空調効率の悪さが課題になります。天井が高く仕上げ材がない状態でも、居心地のよい空間になるよう、空調設計の工夫は欠かせません。機能性を二の次にしてしまうと快適性に影響が及ぶため、デザインと機能のバランスがとれる、建築資材の活かし方を検討しましょう。
◎建築資材をデザインに活用した当社の施工事例
建築資材をデザインに利用して得られるメリットは、建築資材のロス削減やコストカット、自由なデザイン性など多様です。建築資材をデザインに活用するときは、資材以外とのバランスを調整し、空間をトータルでアレンジするとよいでしょう。
〇東京江東区シェアオフィス

◎まとめ
あえて建築資材をむき出しのまま内装のデザインに活用すると、コストダウンや建築資材のロス解消、自由なデザイン設計など、複数のメリットを得られます。建築資材をデザインとして有効利用するには、デザイン性と機能性のバランス調整や、空間全体に目を向けたデザイン設計といったチェックポイントがあります。建築資材をデザインに活用したリノベーションにご興味がある方は、当社までお気軽にご相談ください。
